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△▼    中国経済最前線−特集ニュース版−      1999/10/26    ▼△
▼△       《第7号−2》 (NO.15)       (発行部数 2,615部)     △▼ 
△▼           http://www1.neweb.ne.jp/wa/prc/             ▼△
▼△   (バックナンバーの閲覧、ニュース閲覧、読者『掲示板』を用意。)   △▼
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    《第7号》 中国の航空業界 〜黒字転換というが、本当に収益改善なのか?〜
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  《第7号》本文(後編)
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 ★ 前編のバックナンバーはここをクリックして下さい。


◆体質・構造改革が叫ばれる中国航空業界、今後の展望や如何に?(後編)


 中国の各航空会社は「航空建設基金」として毎年、売上高の10%を上納し
 なければならなかった。民航総局は今年、それを一挙に5%まで引き下げた。
 単純計算では、これだけで5%の利益増加に繋がるから確かに大きな数字だ。

 これによる利益増加額について、業界関係者の試算では、深セン航空で5千
 万元、東方航空や中国国際航空では5〜6億元に達し、全体では各航空会社
 の利益のおよそ半分に相当する金額という。

 加えて、航空機の減価償却期間を20年にまで引き上げたことで、この部分
 のコストが大幅に下がる結果にもなったという。

 ところで、各航空会社が本来支払うべき航空建設基金が半分に減ったことで、
 航空会社の負担は確かに軽減された。が、その一方で国家の負担は増加した
 わけだから、当然、最終的には国民などへの税金となって跳ね返ってくる。
 それ故、一部のマスコミが批判するのも頷ける。

 このように深く追求してみると、中国の航空業界全般としては結局、本質的
 なところで殆ど変化がないように見受けられる。

 ただ、「国有航空会社などの財産権を各企業に移管した上で、早急に各企業
 の自由競争とすべきだ」との意見が存在する一方で、「それだけでは、価格
 競争を再燃させるだけで、本質的な改善とはならない。」との慎重派の意見
 も出されるようになってきた。

 そのような慎重派の多くは、「鉄道路線を見習い、国土の広さでは中国と類
 似している米国の航空業界も見習った上で、構造的な改革が必須。」と、唱
 えている。

 「航空旅客輸送は速度が命。実際の移動時間で鉄道に勝ったとしても、搭乗
 手続きなどを含めた総合的な所用時間で大差がなければ勝ち目はない。離陸
 時刻の90分前までに(実際には30分前でも問題ない場合が多いが・・。)
 チェックインカウンターに到着しなければならない現状を、如何に改善する
 かといった課題への取り組みも急務。」

 加えて、「利用料金でも、欧米諸国に比べると中国は割高。人件費の安い中
 国で欧米より割高になる理由は、管理コストが高すぎることに過ぎない。つ
 まり、効率が悪く無駄が多いということで、この点の改善も必須だ。」

 「これらを解決するには、アメリカ式の「幹線・支線方式」を採用し、輸送
 コストの無駄を極力抑えるしかない。」と、一部の専門家は力説する。


◆搭乗手続き時間の短縮、支線ルートの拡大、果たして中国で成功するか?

 米国の航空路線は大きく、大都市間を結ぶ「幹線」と、大都市と中都市及び
 中都市間を結ぶ「支線」とに分かれているという。私自身は米国に行ったこ
 とがないため、詳細を語ることはできないが、簡単にいうと以下のようだ。

 幹線は、通常ジャンボ機などの大型機を採用し、通常のフライトと同様に搭
 乗手続きを済ませて機内に乗り込むことになる。従って、搭乗手続きに掛か
 る時間も計算して、空港に向かわなければならない。例えば、ワシントンと
 サンフランシスコを結ぶ幹線では、ボーイング767、747、757など
 のジャンボ機が採用され、所要時間は4〜5時間。

 一方の支線は、通常20座席程度の小型機が採用され、15〜30分間隔で
 離発着している。特別な搭乗手続きも不要で、利用者はバスや鉄道感覚で、
 その場でチケットを購入して搭乗(乗車というべきか)する。

 ちなみに、ワシントン−サンフランシスコ間を結ぶ支線では、全てこの様な
 方式が採用されているため、各空港での乗り継ぎ所要時間は40分を超えな
 いという。利用率の低い支線などでは、格安料金が設定されている場合も多
 いため、大都市間を飛行機で安く移動したければ、支線を1〜2回乗り継ぐ
 方が好いと言われている。(本当でしょうか?詳しい方がおられたら、ご連
 絡下さい。)

 さらに、航空自由化と構造改革が進む米国では、幹線でも様々な割引が適用
 されており、通常は1千km当たりの価格が100〜150ドル(中国の場
 合は1千元前後という)であっても、早期予約(出発日の30日前などに予
 約)による割引の適用や、スチュワーデスのいない無サービス・フライトで
 は半額などの割引も行われている。最近では、インターネットを通じて、利
 用者による価格提示の方法が登場したことも記憶に新しい。

 例えば、ワシントン−サンフランシスコ間で、利用者が50ドルの希望価格
 を提示し、出発前までに航空会社がそれに応じれば商談成立となる。いわゆ
 る逆入札のような方式だ。航空会社にとっても、その時期に空席が多ければ
 格安価格で応じても問題はなく、両者にとってメリットの高いシステムだ。

 さて、中国の場合はどうかというと、ご存じの通り中都市間及び中都市と大
 都市間を結ぶ路線、いわゆる支線であっても100座席以上の航空機を採用
 している場合が多い。日に1便か週に数便というケースも多く、もともと利
 用客の少ない路線で利便性の悪さが加わり、往々にして鉄道やバスに旅客を
 奪われてしまう。

 そのため、利用客にとっても割高になるだけでなく、航空会社にとっても、
 一部の支線では赤字の垂れ流しになってしまう。これに業を煮やした民航総
 局も国内不採算路線の撤廃を命じたわけであるが、根本的なことは解決して
 いないといえる。

 ただ、米国式の支線を増やそうとする動きも出てきた。海南航空では今年、
 海南島と珠江デルタ地域(広東省)を結ぶ路線で、現有9機に19機を追加
 して大幅な増便を進めている。さらに同社では、南京(江蘇省)−寧波(浙
 江省)間で3〜4機の航空機を活用して、約1時間単位で離発着させるとい
 う、完璧な米国式を採用することで調整が進められている。が、非常に残念
 なことに、当初は今年9月から開通する予定であったが、未だに民航総局の
 許可は下りていないらしい。

 米国式の支線を増やそうとしても、中国では多くの制約があるという。

 その1つが空港の離発着費用。中国では膨大な建設費の掛かる大空港を造り
 過ぎたため、空港の資金回収率は非常に低く、およそ80%の空港が赤字に
 悩まされているという。従って、空港を利用する航空会社にも、しわ寄せが
 きている。通常の離発着費用は、座席数わずか30の航空機であっても、ボ
 ーイング737クラスと同等の2,000元/回の支払が発生するらしい。

 余談になるが、数年前までは地方の一部の空港では、空港利用税を徴収して
 いなかったが、最近では我々利用者へのしわ寄せも顕著になり、殆どの全て
 の空港で利用税を徴収されるようになった。(大した設備もないのに、何故?
 と言われる所以は、ここにありそうだ。)

 それ故、仮に高い搭乗率を実現できたとしても、離発着費用がネックとなり、
 少人数しか搭乗できない支線での収益確保は非常に難しい。海南航空と山東
 航空の多くの支線では、中国民航平均の搭乗率56%に対して、85%以上
 に達しているというが・・。

 もう1つの問題は、利用できる航空機にあるという。数年前に制定された不
 文律では、国内の支線で利用できる航空機は国産に限られ、外国産は使用で
 きないらしい。唯一の例外は、海南航空と山東航空が、支線用として既に利
 用している外国産の航空機だけという。

 残念ながら、立ち後れた技術の中国産では効率が悪い。そのためかどうかは
 判らないが、中国の大部分の支線では赤字になっているという。(利用者の
 立場から考えても、安全性に心配がある中国産では遠慮したくなる気持ちも
 否定できないであろう。)

 さて、米国式の支線を拡大されるために、もう1つのネックとなるのが、搭
 乗手続きに費やす時間だ。これに対しても、果敢に立ち向かおうとしている
 のが山東航空。

 通常は90分前までに空港に到着し、搭乗手続きを開始しなければならない
 が、これを20分前までに短縮し、最低10分前までに到着すれば搭乗を許
 可するという方式に挑み始めた。

 山東航空は今年8月29日、青島−臨沂間(ともに山東省内)の支線で試験
 運用に成功した。現在、大連空港で大連(遼寧省)−済南(山東省)間の支
 線に適用することで調整が進められているという。これに成功すれば、山東
 航空が運航する全ての支線で適用することになるという。

 ただ、これに対して疑問を投げかけている専門家も多い。
 「青島−臨沂間での成功は、山東航空の本拠地での事で、且つ支線の中でも
 更に小さなローカル路線。大連空港なると勝手が違うし、支線とはいえ、重
 要度は全く違う。一度、空港の管制システムに問題が発生すれば、簡単に離
 陸時刻は遅延される。加えて、中規模都市以上では空港に着くまでに、渋滞
 に巻き込まれる可能性も高く、遅れる乗客も多発することに為りかねない。」
 というように。

 結局、搭乗手続きの時間を短縮するための前提条件は、15〜30分間隔で
 離発着するという事になりそうだ。この前提があれば、利用者はバス感覚で
 飛行機を利用することができるため、仮に前のフライトに乗り遅れたとして
 も、最大で30分も待てば、次ぎのフライトを利用できる。

 中国の航空業界でも1日も早く、米国並みに割安で利便性の高い路線が実現
 することを祈りたいが、残された課題は山積みで前途は多難といえそうだ。


◆後書き

 今回、新華社から流れた1つの報道を、中国の別の新聞、雑誌や文献などを
 参考に筆者の知識を総合して、様々な角度から捉えてみた。

 ここで掲載した内容が絶対的に、中国の航空業界の実体を示す真実かどうか
 は、残念ながら筆者にも保証はできない。ただ、新華社が発表した以外の側
 面も存在していることは、確かだといえそうだ。

 また、以前の中国では、国営通信の発表に異を唱える勢力は皆無であったが、
 最近は経済問題だけに限れば、かなり言論の自由が保証されるようになって
 きたと思われる。この点に関していえば、中国の報道機関でも高く評価でき
 るようになってきたのではないだろうか。

 ただ、マスコミの中立性から考えれば、政治批判が殆ど見受けられないのも
 残念なことではある。が、経済面で間接的に政策を批判する傾向が増えてき
 たことは、非常に大きな変革ともいえる。

 言論の自由が薄れていくようにしか見えない香港に比べれば、中国本土のマ
 スコミの努力には、素直に敬意を評したい気持ちである。

 1つの偏った報道だけに惑わされては、事の本質を見失うこともある。特に
 中立的な立場で論じるマスコミが少ない中国では。そんな事を物語っていた
 ように感じた。如何であろうか?

 読者の方々でご意見があれば、ご連絡頂きたい。


(完)

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