▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼ △▼ 中国経済最前線−特集ニュース版− 1999/11/14 ▼△ ▼△ 《第8号−1》 (NO.16) (発行部数 2,728部) △▼ △▼ http://www1.neweb.ne.jp/wa/prc/ ▼△ ▼△ (バックナンバーの閲覧、ニュース閲覧、読者『掲示板』を用意。) △▼ △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△ ====================================================================== 《第8号》 どうなる国有企業改革、封閉貸款と債務株式化は有効か? ====================================================================== ------------------------------- INDEX -------------------------------- ◎《第8号》本文 ◆3年以内で国有中大型企業の黒字転換は可能か? ◆今年からの矢継ぎ早の一連政策、有効性や如何に ◆債務株式化、国有企業の赤字脱却の決め手となるか? ◆後書き ◎次回の予告 ---------------------------------------------------------------------- ********************* 《第8号》本文(前編) ********************* ◆3年以内で国有中大型企業の黒字転換は可能か? 中国政府は今年7月、国有企業の赤字脱却も初歩的な成果を収め、収益悪化 にも一定の歯止めが掛かってきたことを明らかにした。 今年上半期(1〜6月)では、国有工業企業及び政府が過半数を出資する工 業企業の純利益は、前年同期比で3.8倍増の243億1,000万元に達 した。石油、化学工業、紡績などの重点業種で収益が改善し、赤字が減少。 地域別では、上半期は26の省・直轄市・自治区で収益が前年同期を上回っ たという。 ご存じの通り、朱鎔基(首相)は98年、3年間で大部分の国有中大型企業 を赤字から黒字に転換する方針を打ち出した。当時、国有中大型企業は1万 6,874社が存在しており、97年末時点での赤字企業は全体の39.1 %にあたる6,599社に達していた。が、既に昨年末までに1,478社 が赤字から脱却したいうから、確かに一応の成果は達成したともいえる。 しかし、一部の黒字化の主な要因は、人員削減や老朽工場の淘汰などによる 総量規制でのコスト削減、国債増発によるインフラ需要の創出、或いは密輸 取締強化による国産品の需要増加などといわれており、残念ながら革新的な 技術改革や企業改革によって国有企業の業績が好転したとは言い難い。 ただ、経営責任の強化やそれに伴う年俸制の導入など、少なからずの改革は 進んでいる事も事実ではある。が、一方では、人員削減などによるレイオフ (一時帰休)職員の増加や失業問題は深刻になるばかりだ。これにアジア危 機も加わって、消費マインドは冷え込んだままで、ほぼ20ヶ月連続で物価 指数はマイナス成長は記録している。 明るい話題としては、今年7〜8月に2ヶ月連続で中国全体の輸出がプラス 成長に転じ、上海などでは物価指数のマイナス成長にも歯止めが掛かり、上 海では6月に12ヶ月ぶりのプラスに転じてきた点であるが、国有企業の明 るい前途を示す材料とは言い切れない。 赤字国債の発行による需要創出は短期的に景気浮揚の助けとはなるが、何時 かは返済しなければならない借金であり、財政を圧迫していることは云うま でもない。 このような状況下では、世間一般で云われている通り、来年までに国有中大 型企業の大部分を赤字から黒字に転換する事は、ほぼ絶望的と云わざるを得 ないし、更に大胆な制度改革の断行は必須と思われる。 ◆今年からの矢継ぎ早の一連政策、有効性や如何に 中国政府は今年8月、資金難に陥っている国有企業支援のため、競争力のあ る製品の製造或いは販売に限定した「封閉貸款」と呼ばれる特殊な融資制度 を新設すると発表した。基本的な考えとしては、「運転資金不足による操業 低下で収益が更に悪化するという悪循環を断ち切り、設備投資や在庫投資意 欲などを盛り上げる。」ということである。 封閉貸款とは、資金用途を原材料の調達、生産、在庫投資、販売業務に限定 し、融資対象製品は他の業務から完全に切り離した独立採算として、収益で 融資を返済するというもの。この考え方は以前から存在しており、一部の銀 行では希に試験運用していた実績があるという。 政府発表などでは、「銀行側は、企業の生産、販売コストなどの全面公開を 強制し、封閉貸款に関わる支出を全て管理することで、融資の焦げ付きを回 避できる。」という。が、実際には二の足を踏んでいる銀行が殆どと言われ ており、封閉貸款の有効性を疑問視する見方が大半である。 深センの某輸出入貿易商社(外貿)では、今年初めから封閉貸款の手法を活 用して、2,000万元の融資を中国銀行に申請しているが、未だに許可は 下りていないという。 これは当然の成り行きといえるが、そもそも銀行側にしてみれば資金の用途 を100%限定することは殆ど不可能で、特に輸出などを手掛ける商社では それが顕著である。業務担当責任者が資金を直接動かす事も多く、企業の財 務部門ですら管理が難しい状態だ。ましてや銀行が実際に厳しく管理できる 筈もなく、融資に慎重な態度を見せている銀行側の判断も頷ける。 とりわけ、この封閉貸款では資金難に陥っている国有企業支援が目的である から、尚更のことだ。従って、何処の銀行も担保を要求するか、別企業(親 会社など)の債務保証などを必要とする。もともと資金難に陥っている企業 にとって差し出す担保など、ある筈もなく、債務保証を依頼できる企業を探 す事も極めて困難である。 このように、表面的にはシステム上の問題に見えるが、実質的には企業全体 の信用危機であり、これは一企業の個別問題ともいえない。が、最近では外 部環境の変化も起因し、一部の銀行の姿勢も変化を見せ始めた。従来は頑な に用途限定は不可能としていた銀行も、一部では経営者の資質を一番に評価 し、次にプロジェクトの内容を評価する事で、封閉貸款に前向きに取り組も うとしている。 中国の銀行も、ようやく本当の意味での銀行業務を目指し始めたといえそう だが、融資先を如何に査定するかなど、社内体制の整備と人材育成が大きな 課題であり、早急に解決できる問題でもなさそうだ。 さて、国有企業改革の一環として、中国政府は今年9月から矢継ぎ早に一連 の政策や規制緩和(含む方針案)などを打ち出してきた。 先ず、国有企業と上場企業に条件付きではあるが、株式売買を解禁した。 「ノンバンクからの借入金や外国政府からの借款を購入資金に充てない。他 の法人の口座や資金を利用しない。エクイティファイナンス(新株発行を伴 う資金調達)の資金を転用しない。同一銘柄の売買には6ヶ月以上の間隔を 置く。」などの条件があり、自由売買とはいえない。 が、従来は国有及び上場企業の名義で株式を売買できなかった事を考えれば、 これが解禁となる事で、株式市場に弾みがつき、新規上場を促進するきっか けにはなりそうだ。 次に、上海と深センの証券取引所にハイテク企業を優先的に上場させる特別 枠を設ける方針を打ち出した。開設時期は未定であるが、科学技術部と中国 科学院がハイテク企業を認定し、一般企業より緩やかな条件で上場させる予 定という。上場後も増資を優先的に認め、低コストの資金調達を支援すると 同時に、これらのハイテク企業で役員や従業員に対するストックオプション 制度の試験導入も検討中という。 10月に入って、自社株買いを試験的に認可する方針も打ち出した。中国内 で発行しているB株(外国人向けの中国企業株)市場と、香港で中国企業が 発行しているH株市場に上場している中国企業に対して、自社株買いを試験 的に認可するというものだ。 中国政府は認可時期は明らかにしていないが、早ければ今年中に実施される との見方も浮上している。これが実現すれば、低迷しているB株とH株市場 にも弾みがつくことになる。 ただ、これら一連の政策によって市場や一部の企業が潤う事はあっても、赤 字となっている国有中大型企業を黒字化する決定打にはならない。経済が活 性化する事で、余剰人員の受け皿を増やす助けとはなるが・・。ただ、最近 の中国の指導部もその点は十分に理解しているようだ。 ◆債務株式化、国有企業の赤字脱却の決め手となるか? 中国政府は今年8月、国有企業が抱える金融債務を株式に転換して、有利子 負債を軽減する「債務株式化」を加速する方針を明らかにした。転換した株 式の一部は市場を通じて国内外の投資家に売却する予定という。 債務の株式化は、中国建設銀行など四大国有商業銀行が不良債権処理のため に設立した資産管理会社を主体に進める予定で、推定では1兆2千億元程度 の債務を株式化するとの観測も出ていた。 債務株式化については、数年前からその必要性を論じられていた。 中国では改革開放以来、国有企業(国営企業)の平均負債率は上昇の一途を 辿っている。1980年には僅か8.7%に過ぎなかった負債率が、93年 には67.5%、94年には79%以上にも達し、それ以後も年々増加して いるという。 ◆後編はここを参照下さい。
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